君が思い出になる前に…
「ねぇ、ねぇ、あれ乗ろうよ!」
ゲートを通り抜け、絵美が指差した先は、ジェットコースター!
うわっ!想像はしてたが、いきなりですか…。
「う、うん。いいよ」
顔が引きつってきた。しかも回転するやつだよ…。
順番待ちの間は楽しく会話していた。
でも順番がくると、さすがに無言になる。
あとは『ワーワー、ギャーギャー』
その後も数種類あるジェットコースターばかり、連続で…。さすがに凹んできたおれ。
絵美は更に元気だ。凄い…。
「少し休む?」
おれの顔色を察知したのか、絵美が気を使ってくれた。
「う、うん…」
覇気なく返事するおれ…。
情けないかも。
大きな木の下にあるベンチに座った。
木陰になっていて、6月の強い日差しを遮ってくれていた。涼しい風が絵美のサラサラした長い髪を吹き流している。
「あれ?祐作?」
聞き覚えのある声がした。健太だ。
「おぉ~!」
こんなところで会うなんて。
まぁこれだけ人がいれば、知ってるやつに会う事もあるだろうと覚悟はしていたが、よりによってこいつかい。
「あ、デート?」
健太が興味津々って顔で言った。
見ればわかるだろ?二人で来てるんだから。
「健太は?」
「実はおれも…」
そう言って指差す先を見た。
真理絵と、紀子だ!「智也もいっしょなんだけどね」
照れながら健太が言った。
紀子と真理絵がこっちに気がついた。
真理絵がおもいっきり手を振ってアピールしている。
紀子は…。
紀子は少しだけ頭を下げただけ。
元気無さそうな感じがした。
「祐作がうらやましくってさぁ、智也と相談して二人を誘ったんだ」
自慢げに話す健太。「智也は?」
辺りを見回して聞いた。
「あいつジャンケンに負けて、今ソフトクリーム買いに行ってる」
健太、そうとう嬉しそう。
「杉下さん、こんにちは!」
真理絵と紀子がやってきた。
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