君が思い出になる前に…
未来から来た事を告白しても、変わらず付き合ってくれる優しい子。
裏切りなんて絶対できない…。ずっとそばにいて守ってあげよう。そう思った。

ベンEキングの同名の主題歌は、おれたちの親の世代に流行った歌だった。
ベース音で始まる、誰もが聴いた事のある心に染みる歌。
エンディングにその歌が流れ、およそ90分の映画が終わった。
「凄くいい映画だったね」
絵美の第一声。
「本当良かったね」無表情で答えてしまった。
「どうしたの?」
そんな顔をしたおれを鋭く見抜いている。
「え?なんでもないよ…、出ようか」
「うん…」
おれの後ろに続いて、少し明るくなった通路を出口へと向かった。
途中、段差で絵美がつまづきそうになり、
「キャッ」と声を上げた。
「大丈夫?」
振り返って聞いた。「大丈夫、ちゃんと掴んでるから」
そう言って、絵美はおれのトレーナーの背中をしっかり摘んでいた。

映画館を出ると、ムッとする熱気が漂っていた。
映画館の中はそうとう冷房が効いていたみたい。

「ね、海見に行こうよ」
突然絵美が言いだした。
「う、うんいいけど…」
まだまだ続くおれたちのデート。
街を抜けて海に出た。
砂浜が広がっている。
「今日は楽しかったぁ」
海に向かい背伸びをしながら、絵美が言った。
「おれも、楽しかったよ」
絵美と一日過ごせただけで、充分そう思えた。
「あたしね、祐ちゃんに言わなきゃいけない事があるの…」うつむいて絵美が言った。
「何?突然…」
何の告白?
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