君が思い出になる前に…
「あたし、中学を卒業したら留学するの」
「留学?どこに?」びっくりして聞き返した。
「ロンドン…。お姉さんと二人で」
「急になんで?」
「急じゃないのよ。前から言われてた事なの。お姉さんが高校卒業したら留学する事になっていて、あたしもお姉さんと一緒に行くって…」「そうなの?」
そう言えば、絵美の中学卒業後の進路は記憶になかった。
なかったと言うより知らなかったと言った方が正しい。
思いもよらぬ告白だった…。
「何年イギリスに行ってくるの?」
「三年…」
「三年?」
「うん…」
「そんなに…」
「うん…」
言葉少なに時間が過ぎて行く。
「あと9ヶ月かぁ、一緒にいられるの…」
なんとなくため息が出た。
「そんな寂しい事言わないで…。あたしが帰ってくるまで、祐ちゃん待っててくれる?」
待っているとは、きっと絵美も思っていないだろう。
「うん…。もちろん待ってるよ」
嘘を言ったかもしれない。
夕日が絵美の顔を照らしていた。
海は穏やかにさざ波を立てている。
こんな展開になるなんて、考えてもいなかった。
今日のデートは、この事を告げる為のものだったのか…。
15年前にはそんな告白はされなかった。複雑な気分…。


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