リアル☆タイムスリップ
「お前もそう思ったからこそ、まだ報告段階ではないと判断したんだろう?」

「は。あの、怪しい店は他にもあるんで」

 下手に池田屋の名を出していいものか。
 はたしてどういう経緯で池田屋事件が起こったんだっけか、と必死で考えながら、正宗は言葉を紡ぐ。
 正宗の言葉を受けて、土方が地図を出して前に広げた。

「……ここと、この辺り。あと……ここですかね」

 適当に通りの店を指差し、最後に池田屋も入れておく。

「山崎さんは、ここと思ったところがあるのかもしれません。そこに潜入してるのかも」

「何にしろ、潜入しっ放しじゃ意味ねぇ」

 ち、と舌打ちし、土方は地図を睨んだ。
 土方の諸々の所業を知っているだけに、ちょっとした仕草にひやひやする。

---こんなおっかない男になんか萌えるか!---

 現代もやしっ子の貧弱な精神では、とてももたない。
 タイムスリップ王道の恋愛沙汰など、あるわけないとつくづく思う。
 これは正宗が男だからではないはずだ。

「とりあえず、引き続き私が探ってみます」

「そうだな。でももう時がねぇ。この辺りってことぁわかってるんだ。あとは虱潰しに検めていくしかねぇな」

「とはいえ場所も散らばってるし、人数もわからん。会津藩にも出動願おう」

 近藤と土方のやり取りを、正宗は注意深く聞いた。
 確実に、池田屋事件が近付いている。
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