アマービリタ

「やあ、彰人。久しぶりだね、元気だったかい?」
「源さん!!!」
女の子はこの場の救世主が来たかのような顔で、俺の親父を見つめる。
そして俺は面倒くさい人物がもう一人増えて頭を抱えていた。

「やあ、じゃないですよお父さん。何しに来たんですか?」
嫌みたらしく言ってみれば
「何しに来たとは、寂しいこと言うじゃ無いか。久しぶりの親子の時間というのに」
俺と親父の会話に話者が変わるたび顔を左右に動かす間抜けな女の子は、急に驚いて素っ頓狂な声を発した。

「おおお、お父様?!源さんはこの人のお父様でしたんですか?」
「そうさ、結構似てるでしょう?」
「は、はい!お二人ともお綺麗な顔をしていらっしゃいます!」

何がお綺麗な顔をしていらっしゃいます!だ。変な返答をしないで欲しい。
呆れ顔で二人を見る俺をよそに、二人は何故か手を取り合って握手をしてどこが一番似てるだのここは母親似なのかだのを語り出した。

親父は女好きだった…
握る手がヤラシイ。いい歳して何してるんだか。

「それで、何の用なんですか?用もなしに次男の所にわざわざ足を運ぶほど暇な人間ではないでしょう?」
「次男だろうが長男だろうが私にとったらどちらも大切な息子だよ。まあ、本題に移すとしようか。おい、頼む」

その一言で店内に大柄な男が数人大きな荷物…いや、機材のようなものを運んで来た。
「いやいや、何してんの?勝手に。これなんだよ」
「見ればわかるよ、私は律ちゃんとの約束を果たしに来たんだよ。そのために必要な道具を持って来たんだ」

約束って…、こんな大掛かりなもの用意しやがってこれじゃあディナーの準備が出来ねえ。

ディナーが始まる2時間前、ぼちぼち休憩を終えたシェフやウエイターやらが帰って来た。
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