アマービリタ

「広江さん…なんですかこれ？」
当然みんなの頭にはクエスチョンマークが浮かび上がり、この状況をなんとか把握しようとしていた。

「知らねーよ、そこにいる“社長”にでも聞いてくれ」
「あ、社長！お疲れ様です。」
“社長”の姿を見つけると帰って来た数人が、挨拶するために社長の近くまで駆け寄った。

本当、社員やバイトを思いやる気持ちは素晴らしいほど持ち合わせてる。自分の父に言うのもなんだが良き社長で良き会社を守っている。尊敬しているし、俺にはないフレンドリーさを少しは見習わないとと思うこともあるが……

「おい、いい加減アルバイトを口説くのはやめてくれ。」
「口説くとは失礼だな！私はアルバイトも大切にすることを社訓にしてだな」
「ならこの手はなんだよ、エロオヤジ」

この手、とは親父が女性アルバイトの挨拶にアルバイトの腰に手を持って行き抱き寄せる感じで挨拶を交わしている状況のことだ。
その手を無理やり剥がし、女性アルバイトにディナーの準備を進めるように指示した。

「はぁ。お堅いねぇ、ただの挨拶だぞ。向こうもそれをわかってるから何も言わないんであってなあ！」
そう。確かに親父はあんなんだが、何故か女性からの支持が絶えない。男性からはもちろん、女性からも支持されているのはあの行動を見れば永久の謎だ。
「社長に嫌ですと言える人の方がなかないないものですよ。弁えてください。で、まだ準備かかるんですか？俺はディナーの準備を進めますので失礼しますよ」