鬼が往く
あれから、何時間が経ったのだろう。

死なない程度に嬲られ続け、銀二は全身傷だらけになって、力無くぐったりとしていた。

呻き声は最後まで上げない。

常人なら既に音を上げてしまっているほどの激しい責め苦にも、銀二は何とか正気を保っていた。

そして、この数時間の責め苦にも、彼は一度たりとも命乞いの言葉を発する事はなかった。

「しぶとい奴やのぅ…ホンマに…」

息を荒げながら、椎名が言う。

「もうええわ。チャカ貸せ」

椎名は近くにいた組員から拳銃を受け取り、銀二の蟀谷に押し付けた。

トドメを刺す気だ。

しかし。

「その辺にしとけ」

地下室に声が響いた。

振り向く組員達。

…そこには捜査一課の刑事、巽と倉本が立っていた。

「沢渡 銀二を解放してもらう」

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