鬼が往く
「何やオドレら!邪魔するとオドレらも嬲るぞコラ!」

いきり立つ椎名。

しかし。

「嬲る?今俺らを嬲るっつったのか?コラ…」

巽は椎名に顔を近づける。

「よく分かってねえな、明石組のボクちゃん若頭はよ…拉致監禁の上、複数によるリンチ…警察がてめぇら明石組を潰すのには十分な罪状だ…構成員1万人、纏めて消し飛ばしてやろうか?」

「く…」

椎名は口を噤む。

警視庁捜査一課の『野獣』の恐ろしさは、椎名とて知っている。

超法規的な権限を持ち、警察の枠組みを超えた捜査を可能とする刑事達。

暴力団のような非合法組織が、最も敵に回してはならない存在。

「じゃあ連れて帰るぜ。今回のとこは、ワンチャンだけやるよ」

組員達の目の前で、巽は銀二の拘束を解き、連れ帰る。

…出て行く前に、銀二が小さく呟いた。

「世話になったな…近々必ず礼に来る…待ってろや…」

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