秘書と野獣

***


「おいウサギ」
「え? …きゃっ?!」

突然後ろから手を掴んだ俺に、ウサギの肩が面白いほどに跳ね上がった。
驚いて振り返ったこいつの顔が赤いのは恥ずかしいから…だけじゃない。

「やっぱり。お前熱があるだろ」
「えっ…いえ、その…」
「なんで言わない。お前は何回言えばわかるんだ? こういうことで遠慮するなって散々言い聞かせてるだろうが」

「ご、ごめんなさいっ…」

はぁーーっと大きく溜め息をついた俺に、ウサギの体がビクッと竦み上がる。


あの日から一週間。朝から様子がおかしいとは思っていたが、夕方になってそれは目に見えて悪化していった。本人は何食わぬ顔で過ごしているが、他の奴は誤魔化せてもこの俺には通用しない。
間違いなく莉緒の風邪がうつったのだろう。それに加えて疲れも蓄積しているに違いない。

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