秘書と野獣
軽く上がった息を整えながら早足に部屋の前へと急ぐ。
「きゃっ…おねえちゃんっ!! 大丈夫?! しっかりしてっ!!」
「 ?! 」
中の様子を伺おうと耳を澄ませたところでガタンという音と共に莉緒の悲鳴が聞こえてきた。ただごとではない様子にすぐさま目の前の扉を叩く。
「おい、莉緒! 何があった! ここを開けろ!」
「えっ…進藤、さん…?」
「そうだ。ウサギがどうした! いいから開けろ!」
「は、はいっ…!」
こいつにとって俺はまさに救世主同然だったのだろう。慌てて扉を開けた莉緒の目には涙が溜まっていて、何故ここに俺がいるかなんてことには触れもせず、藁にも縋る思いでしがみついてきた。
「進藤さん、おねえちゃんが…!」
「ウサギがどうした___っ、おい、ウサギっ!!」
ふと部屋の奥に目をやると、ダイニングに倒れ込んでいるウサギの姿が目に入った。大股で駆け寄って体を起こすと、布越しでもはっきりわかるほどに体が熱い。さっき別れたときよりも体中が紅潮し、呼吸を乱しながらぐったりしている。
「おい、ウサギ! しっかりしろっ!! なんで…病院に行ったんじゃないのか?!」
「それが…人が多すぎて時間もギリギリだったせいで断られたみたいで…。帰ってきたときはまだ普通にしてたから、ちょっと寝れば大丈夫って言って寝てたんです。それでさっきトイレに行くのに起き上がったらフラフラして歩くのもやっとで…」