秘書と野獣
「今度はお前の番だな」
「…え?」
友人達の輪の中に入っていった主役を見送りながら、手元のブーケをうっとりと眺めていたウサギがキョトンと顔を上げる。
「莉緒も言ってただろ。次はお前が幸せになる番だって」
「あ…それは…なんていうか、お約束みたいな感じで…」
「なわけねーだろ。あいつは本気でお前の幸せを願ってんだよ。…もういい加減誰かのために頑張るのは終わりにして、これからは自分の幸せだけを考えていけよ」
「……は、い…」
俯きがちにブーケを見つめるウサギの表情は晴れない。
この期に及んでまだ自分の事を前向きに考える気になれないのか。
「お前が望めばいつだって幸せは手に入るんだよ」
「…え?」
「お前がそれに気付こうとしないだけで、すぐにだってな」
「…? それは、どういう…」
本気でわからないとばかりに口を開きかけたその時、会場がわっ!と大歓声に包まれた。見ればどうやら友人達にけしかけられた新郎新婦がキスをしたところらしい。照れくさそうにしながらも隠しきれない幸せオーラに、話しかけていたことも忘れてウサギは微笑ましそうにその光景を眺めていた。
「…本当に。お前が望むなら明日にだって花嫁にしてやるのに」
隣で俺がそんな言葉を口にしていたことなど気付きもせずに。