秘書と野獣
「猛さん、もしかしてですけど本気で動き出す気になりました?」
パーティもお開きとなり、一足先に外に出ていた俺の元へ弟の慎二が駆け寄ってくる。その顔はニヤニヤと締まりがない。うるせぇと一発叩いてやりたいところだが、否定する要素など皆無なだけにぐっと我慢する。
「まぁな」
「えっ、マジっすか?! …なんか俺、モーレツに感動して泣きそうっす」
「アホか。つーかなんでわかった?」
「いやいや、だってあれだけ認めようとしなかった猛さんがですよ? あんなにあっつい視線で姉貴を見つめてれば誰だって気付きますって!」
あっつい視線って…まぁ事実だけどよ。
「でも肝心の姉貴はそれに全然気付いてないっぽかったですけどね」
「うるせーな」
「いって! ひどいっすよ猛さん、俺は事実を言っただけなのに!」
「やかましいわ! お前はわざわざ来たかと思えば嫌味を言いにきたのか?」
「違いますよ! 俺は最大限のエールを猛さんに送ろうと思ってですね! だってあの姉貴ですよ? 半分化石に足突っ込んだような状態なのに、いくら猛さんがその気になったからってそうそう簡単に落ちるとは思えないんですよ」
弟からもそう思われてるってあいつは一体どんだけなんだよ。
「まぁそれは否定しない。莉緒が落ち着くまではと俺も我慢してたが、ありがたいことにそれも今日までで終えられそうだからな。これからは一切遠慮はしねーよ。簡単に落ちないなら落とすまでだ」
はっきりそう宣言した俺に慎二が心底驚いている。