秘書と野獣
…そっちがその気なら。
こっちだってとことん付き合ってやろうじゃねぇか。
少なくともこいつが今目の前にいるのが俺だということに気付いているのは間違いない。オフの姿を幾度となく見ているウサギが気付かないはずがなければ、さっきの反応を見てもそれは確実だ。
お前が何を考え何をしようとしているのか。その上で俺がどう出るべきか。
判断するのは全ての茶番に付き合ってからでも遅くはない。
そう判断した俺は、ウサギの望むままに気付かないフリを通してやった。
俺は俺であくまでウサギが別人を装っているだけ。
隠すことなく素性をさらけ出す俺とは対照的に、ウサギは自分については曖昧に言葉を濁し続けていた。やはり明らかに自分だと気付かれないように仕向けている。
話せば話すほど心に靄がかかっていく一方で、純粋にこいつとの会話を楽しいと感じている自分もいた。いつもは上司と部下という一線を決して越えようとしないウサギが、見知らぬ女として俺に向き合っている。
俺の知らない女としての一面を垣間見たようで、複雑ながらもやっぱりこいつといるだけで心が安らぐと再認識していた。