秘書と野獣
「社長?」
「なんだよ」
部屋に入っても尚警戒心剥き出しのライオンはガルルと鼻息が荒い。
「もしかして…社長は私が思ってるよりも長く私のことが好きだったんですか?」
「___はっ?!」
いつもならこんな自惚れたことなんて考えないし、聞くなんてもっての外。
だけど…だけど、そう聞きたくなるのはもう当然の流れでしょう?
そんなことを聞かれるとは思ってもいなかったのか、社長はしばらく瞠目した後、我に返ったように慌てて明後日の方向に目をやる。
その耳は心なしか…というよりも、確実に赤い。
「……社長?」
自分の頭とお尻からニョキニョキと何かが出てきたのがわかる。
聞こえないふりを通す社長に、私は普段なら絶対に出さないような猫撫で声で甘える。
あぁ、彼が言ってた嗜虐心ってこういうことなんだ。
…うん、悪くないかも。