誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



「真琴も……死んじゃうの……?」



「ううん。私の代償は、違うものなの。
だから……私もみんなのこと、ちゃんと見てるから。」








"もし、お前に関しての記憶が戻るようなことがあったならば、全員の記憶を元に戻してやろう。"








そう言った神様からの言葉を、私は信じる。



もし、私を思い出してくれたなら……その時は、もう一度……。



〈真琴……そろそろ時間よ。〉



「うん。」



別れは今だけ。



悲しくなんかない。








「真琴、俺たちはずっとお前のこと待ってるからな。」



「今更僕たちは離れられるわけないからね。」



「燐理、由樹さん。
本当にお世話になりました。」



2人の優しさ、ちゃんと忘れないよ。








そして、私たちの輪から少し離れたところにいる人を見つめた。



「……ごめんね。
もっと早く見つけてあげればよかった。」



「やっと、出会えたのに……また、離れ離れになる、の……?」



「また寂しい思いをさせてごめんね。朱羅。」



そう言ってギュッと抱きしめる。



あぁ、あの頃はまだ私より全然小さくて泣いてばかりで、私の後ろに隠れていた弟だったのに。



離れている間に、こんなにも立派に成長したんだね。



やっと……名前を呼べた。



「朱羅、これからも……ずっと愛し続けるから。」



「……姉……さん……ッ
待ってて……絶対、探してみせるから……ッ。」



大丈夫。また、すぐ会えるよ。








「真琴、俺たちは……」



何かを言いかけて口を噤んだ桜悠。



桜悠はいつだって私のことを考えて言葉を選んでくれた。



そんな桜悠の優しさが、私は大好きだよ。



「桜悠、笑って?
私は桜悠の笑顔が大好きだから。」



そう言うと、桜悠はゆるゆると口角をあげて笑ってくれた。



全然笑えてなかったけれど、今までで一番綺麗だった。



私も、笑い返した。



多分、私もちゃんと笑えてない。








「真琴……僕、まだ必殺技教えてもらってないよ……。」



涙を瞳いっぱいに溜めて、唇を噛む楽。



その表情に、胸が熱くなったけれど、何とか我慢する。



楽の勇気が私を変える全ての始まりだった。



あの時、手を差し伸べてくれてありがとう。


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