誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



(ビビside)



夜、とある大きな木の上で訪問者を待つ。



その待ち時間に浮かぶのは、真琴のこと。



私にとって唯一無二の存在である真琴。



だからこそ、真琴の奥深くにある感情にも気づいていた。



その感情は深くに根づき、本人の知らず知らずの内に真琴を占領していった。



小さい頃はそのままでもいいと思ったわ。



だって……その感情を真琴から奪うことは、とても残酷過ぎた。



だけど、あの子はもう高校生にまで成長した。



もう、自分のために人生を使ってもいいんじゃないかと。



もう、自分を戒めなくてもいいんじゃないかと。



そう思ったけれど……それに真琴が気づくことはなかった。



なら、私は他人を使って引き出そうと思いついた。



他人を護る仕事をしているんだもの。



その他人から与えられるものがあってもいいと思わない?



与えるばかりじゃ割に合わない。



ボランティアじゃないんだから。



私が、真琴の近くにいる人に求めるものはただ一つ。



"真琴を救い出してもらうこと。"



それが、私とその人たちとの契約みたいなもの。



少なくとも私はそう思っているわ。



人と関わることでしか、人は救われない。



それを私は、幾度も見てきたから。



でも、今回は順調にうまくいっている。



由樹が申し出てくれたことで、それを真琴は受け入れてくれた。



楽が手を差し伸べてくれたことで、



桜悠が近づいてきてくれたことで、



真琴はあの3人と関わりを持つことが出来た。



そして極めつきは今日の来都。



来都が、フードというあの子の盾を取っぱらってくれたことで、自分から人と関わることを決意してくれた。



少しずつ、真琴の心にも変化が起きている。



"今度こそ"救うの。



(それにしても……。)



あの来都や楽の行動には少し驚いた。



あそこまで大胆にするなんて少し妬けるわね。



だって、真琴は…………









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