誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



(black killers 黒蜥蜴side)



繁華街中心にそびえ立つ1つのビル。



そこは知る人ぞ知る場所。



一度入ったら出ることは許されない深い暗闇。



そんなビルの最上階、繁華街を見下ろす人物がいた。










「黒鮫の容態はどうだ?黒蜥蜴。」



「……先程意識が戻りました。
傷は跡形もなく塞がっています。」



ここのボスは皮肉だ。



部下をこれっぽっちも思っていないその瞳がそれを物語っていた。



「white castle……。
目障りな奴だと思っていたが、まさかそんな力があるとは。
そいつは契約者なのか?」



黒蜥蜴は思い出す。



初めてちゃんと見た護り屋の姿を。



white castleの横には常に1匹の黒猫がいた。



真っ赤な瞳をこちらに向けて。



あの黒猫は……使徒である。



「……はい。そのようです。」



「チッ、契約者となると厄介だ。
必ずいつか我々の邪魔になる。
黒蜥蜴。お前に極秘任務を与える。」



その先は聞きたくない。



「white castleを始末しろ。」



その任務は黒蜥蜴には残酷だからだ。



「契約者に普通の殺し屋だと歯がたたんだろう。
だが、お前は違う。
何故ならお前も"契約者"だからだ。」



「……分かりました。」



部屋を出る黒蜥蜴。



少し歩いたところで立ち止まり……。










ガンッ!!!!!



壁に拳を打ち付けた。



「……クッソが……ッ。」



white castleは黒鮫を救ってくれた。



敵を目の前にしても。



あそこまで取り乱して。



さらには自分も犠牲にして。



white castleが助けてくれなかったら、あそこで黒鮫は……。



そう考えると、またしても自分の愚かさに呆れる。



仲間を救えなかった……。



その事実が俺を苦しめる。



そして、その苦しみを俺は受け入れる。



だが、そんなwhite castleを殺すなど俺には出来るはずもない。



それに……。



「……アイツは……駄目なんだ。アイツだけは……。」



遠い過去にしたある約束。



その約束を果たすことだけが、俺に出来る唯一の……償い。



誰にも言うことの出来ない鎖。



黒蜥蜴は首から下がるチェーンを見る。



チェーンの先には1つの指輪がかかっていた。



それは嵌める場所が無くなってしまった指輪。



「ボスとの話終わったのカァ?」



「……あぁ。」



俺は、ここに染まるわけにはいかない。


end














< 56 / 182 >

この作品をシェア

pagetop