誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
結局、あの日から進展は何もなかった。
「おい真琴、何かお前やつれてね?
ちゃんと食ってんのかよ?」
「……あー……うん。」
「なんだそのとぼけた返事は。」
だってそれどころじゃない。
「マスター、真琴くんに何か作ってあげてよ。
何かリクエストはある?」
「……オムライス。」
「だってマスター。お願いできる?」
「畏まりました。」
あ、やっぱりリクエスト出来るんだ。
「それで?真琴くんは何が気がかりで動けないの?」
「……自分から聞きたくない……。」
少なくとも、無理強いはしたくない。
桜悠が話したいと思った時に、聞いてあげたい。
「そういう解釈すっからいけねーんじゃねぇの?」
「……え?」
燐理は煙草を器用に手で弄びながら言った。
「無理強いするとかじゃなくて、お前が手をとってやるんだよ。
そいつも最後の一歩が踏み出せねーんじゃねぇか?」
手をとる……。
「……手をとるって、どうやって?」
「んなの知るか。真琴が考えろよ。
"今回は俺に任せて"って言ったじゃねーか。」
「……ッ、そうだね。」
そうだ。私が桜悠の支えになるんだ。
燐理も由樹さんもそれを了承してくれた。
目の前に出されたオムライスを口に運ぶ。
「……美味しい。」
「それは何よりです。」
マスターの微笑んだ顔、初めて見た。
「マスターって笑うとイケメンだね。」
「由樹さんほどではないです。」
「またまた。」
流石、ほぼ毎日来てるだけはある。
仲いいんだな。
「まぁ、真琴くんがそんなに重く考えることはないんじゃないかな?
考えても分からなくなっちゃった時は、自分のしたいことをすればいいんだよ。
それがきっと真琴くんが心の底から思ってることだと思うから。」
「……ありがとう、由樹さん。」
「おい、俺にはねぇのかよ。」
「……アリガトウ。」
「てっめぇ……今棒読みだっただろーが!!」
燐理と由樹さんに言われて気づいた。
私がしたいこと、とっくに決まってた。
「2人とも、ありがとう。」
もう迷わない。
何かあったら、またその時に考えればいい。
きっと大丈夫。
だけど……少し遅かった。
事態はもう……進んでしまっていた。
«ごめんね、来都。»
«……もう、決めたんだろう?»
«フフッ……止めない、んだね。»
«……お前が決めたことだからな。
お前に何か言う権利なんか、俺にはねぇ。»
«来都らしいね。
でも、今はそれが……俺の胸を痛くする。»
«……、»
«……来都、ありがとう。楽と真琴を、よろしくね。»