誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「どうもコンバンワ。
約束通り殺しに来ましたヨっと。」
「クソッ!!」
ボディーガードが4人……。
可哀想に。
たかがソイツの盾になって命を失っちまうなんてよ。
「……忠告だけはしといてやるヨ。
お前ら……死ぬゼ?」
「いけ!!怯むな!!
金払って雇ってるんだから仕事しろっ!!」
突っ込んでくるボディーガード。
だが、その顔には明らかに恐怖が滲んでいる。
死にたくねぇなら来なきゃいいのに。
少し同情する。
引きたくても引けねぇ。
自分の感情より仕事を優先しなきゃいけねぇ。
例えそれが命を失う結果になると分かっていても。
「……今回だけはサービスしてやるヨ。」
〈同情でもしたカァ?〉
「……そうだな。」
今日の俺はどこかおかしいからな。
ほんの気まぐれだ。
行動パターンを把握し、相手が行動する前に先手を打つ。
そうして4人を気絶させ、本来のターゲットを見る。
「さァ……あとはお前だけだなァ?」
「ひぃぃぃぃッ!!」
床を這いつくばりながら、俺から逃げるターゲット。
角に追い詰め、ジリジリ歩み寄る。
「まままま待ってくれっ!!
アイツさえ殺せば大金が入るんだっ!!
そうすりゃ返済も出来るっ!!」
「アイツ……?」
「そうだっ!!
伊佐波グループの次男だ!!
行方不明のソイツを見つけて殺せば……っ!!」
「……そいつは無理な話だナァ?」
髪を掴みターゲットの顔を無理やり引き上げる。
そして、ソイツの耳元で呟く。
「なぜなら……それは俺だから。」
「な……ッ!?」
「ジャ、さようなら。」
壁に飛び散る血。
ターゲットは驚いた表情をしたまま、首から血飛沫をあげて息絶えた。
〈お前、指名手配でもされてンのカ?〉
「そうみたいだナ。」
デスクに置いてある書類に目を留める。
そこには顔写真も貼付されていた。
【伊佐波グループ次男、伊佐波桜悠を殺せ。
殺したヤツには報酬1000万。】
「……クソが。」
表側じゃ俺を探すフリしといて、裏側じゃ殺しの依頼か。
つくづくやることがダセェ。
「いくゾ、帝。」
〈いいのかヨ、アレは。〉
「きたら全員殺すだけだ。」
〈ケッ、いいねェ。ゾクゾクするゼ。〉
来るなら来ればいい。
もう俺は、あの時の弱い俺じゃない。
end