【完】『そろばん隊士』幕末編

近藤の狙撃から約半月後、それまで緊張の状態にあった鳥羽街道と伏見で、遂に幕府側と新政府側とで紛争が勃発した。

世に言う鳥羽伏見の戦いである。

この混乱の中、洛中で洋学を教えていた山本覚馬が薩摩側に連行され、座敷牢へ押込となった。

いっぽう。

岸島は小荷駄隊の隊長として芦名、島田と共に、伏見街道を本陣の奉行所を目指して移動していた。

近藤たちはすでに奉行所にある。

この小荷駄は中身が実は百四十両もの現金で、奉行所へと運び入れる途中であった。

藤森の稲荷の手前辺りまで来ると、

「あと少しだぞ!」

島田の声に鼓舞されながら、小荷駄隊は進んで行く。

これを。

稲荷の森の藪の中から狙っていたのは加納であった。

「あれを横取れ」

加納が選んだのは狙撃の隙を衝いて奪い取る作戦で、鉄砲の覚えがある鈴木三樹三郎が撃つことになった。



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