【完】『そろばん隊士』幕末編
まだ砲撃の轟音は響いている。
雨もやまない。
「あいつら、下谷を焼け野原にするつもりか」
手塚は驚きを通り越してあきれていた。
やがて。
ドーン、と一際大きな発射音が四発ばかり響いた。
「…なんだ?!」
思わず障子を開けた。
岸島も思わず身を乗り出した。
ほどなく。
雨が小降りになり、大砲の音も消えた。
「…終わったのか」
岸島と手塚は顔を見合わせた。
やがて上野の山の方角から、煙が上がり始めた。
「敗けたな」
手塚は不快な顔を隠さないまま、奥へと引っ込んだ。
岸島はやまない雨を眺めながら、何かが終わって何かが新しく変わるような気がしたようであった。