【完】『そろばん隊士』幕末編
そういうことなのだ、と原田は岸島を拝み倒すように頼み込んだ。
「なれど、法度には金策を勝手にいたすまじきこと、とあります」
これは局中法度のことで、前にはあちこちで借財を作ったことで切腹になった隊士もある。
と。
「原田さん、また新参いびりですか」
明らかに沖田総司の声である。
「いや、おまさの着物の金を借りに来ただけだ」
「それじゃあ僕が貸しますよ」
と沖田がいきなり懐から一分銀を出し、
「これなら文句はないでしょう、まして貸したのは僕ですし」
それを言われると原田は退かざるを得ない。
「…あとから必ず返す」
そういうと原田は門を出た。