【完】『そろばん隊士』幕末編
ほどなく。
「岸島伍長、戻りました」
徳田の口から、赤座隊はそのまま見回りを続け、岸島隊には別の伍長の隊をつけるとの旨が伝えられた。
「で、伍長は?」
「八番隊大砲組、阿部十郎」
「あぁ、阿部伍長か」
八番隊は大砲組から編入された隊士があり、また岸島のように勘定方から編入された隊士もある。
実に雑多ではあるが、それらの個性的な面々があるのが、八番隊の強みでもあった。
まもなく。
阿部十郎が来た。
「まったく赤座さんもなんとも手前勝手なことをする」
着いて早々阿部はこぼした。
「ひとまず赤座さんとは正面橋で落ち合う手筈になっているので、それまでしっかり見回っておきましょう」
岸島は言った。