【完】『そろばん隊士』幕末編

しかしながら。

当の近藤にそのようなことを訊くのも憚られるほど、局中の空気感はヒリヒリとしたものになりつつあった。

というのも。

例の伊東甲子太郎の派閥が、

「新撰組の本来ののぞみは尊皇攘夷ではないのか」

と言い、会津家の差配から離れることを主張し始めたからである。

驚くべきことに。

この意見には牛込の試衛館いらいの同志であるはずの藤堂平助や、池田屋事件の前から伍長をつとめ、今は大砲方である阿部十郎、さらには槍や柔術、果ては銃の扱いまで知る毛内有之助といった者まである。



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