【完】『そろばん隊士』幕末編
◆18◆

しかし。

人選というものは、うまく行かないことのほうがほとんどである。

そこで。

悩み抜いた末、岸島は原田に声をかけた。

「おもしろいじゃねぇか」

原田はまるで博徒の出入りの前のような、昂奮で紅潮した顔を見せたが、

「いや、斬るのではない」

と岸島は言った。

「原田どのならば、斬るのはいつでも斬れよう」

まずは伊東の出方を見て、それからでもおそくはないだろうというのが、岸島の言い分である。

「まぁ仕方がねぇな」

少し不満げであったが、

「おしげのそろばんの師匠に、簡単に死なれちゃ困るからな」

そう笑いながら、最終的に原田は納得したようであった。



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