恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
陽が落ちて、暗くなってきた。

川へ向かう道を手を引かれたまま歩く。


いつも通る道だが、浴衣を着ているので歩き方がゆっくりだ。
リュウも、いつもは跳ねるように行き来しているから、
いつもは見ない庭木や、散歩している犬に目を留めのんびり進んでいく。


「壮一郎に先を越されたなぁ。
絶対俺の方が、先に、結婚出来るって思ってたから、
先に結婚した方に好きなモノ買うって約束してたのに。…」

なるほど、もう、リュウは結婚間近なのか…と胸が苦しくなる。

「リュウ、引越し先は決まった?いつ、引っ越すの?」と、聞く。

リュウの顔が見れない。

「やっと、家は決めた。
これから家具とか必要な家電とかかな?
引越しは、きっと、9月の終わりの週の夜勤明けがいいとおもうから、金曜日にしようかな。
翌週に少し休みをつければ家の中、片付くと思うし…
…ナナコ、新しい家、見に来るか?」と聞く。

なんのために私は見に行くのだろう。
リュウが誰かのために用意した家。
きっと、笑っていられなくなる。

行けないよ。

「あんまり、時間がないかな。
来週の週末は予定が入ってるし、
引越しが終わって、新しい家が片付いてから、遊びに行こうかな?」と私が笑うと、

「ひでえ、片付け、手伝ってよ」

と、リュウも笑ったけれど、


話が続けられずに、沈黙が落ちる。
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