恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
川に近づくにつれ、周りに人が増える。
リュウは私をかばいながら前を歩く。
もう少しで花火が始まる時間だ。
道幅いっぱいにひとが集まり、とうとう、前に進まなくなってきた。

リュウは、後ろにいた私を引き寄せ、前に立たせて、後ろから両腕を回す。
そっと抱き締めて
「ナナコ浴衣よく似合うね。それに、いい匂いだ。」と首筋に顔を埋める。

やめて欲しい。
そんな風にされると、誤解してしまう。

「来年の花火はは2人だけで見たい。」と、リュウは呟く。

私はうなづきそうになって、突然気づく。

誰と一緒に花火を見たいの?
リュウ、来年の今頃は誰と一緒にいるの?
誰と結婚する約束をしているの?
頭の中をぐるぐると聞きたいことが回る。

どうして、私にそんなに優しいの?
恩を返したら、どこにいってしまうの?

怖くて、聞くことが出来ないよ。

私はリュウを失いたくないのだ。
いつから、こんなに好きになってしまったのだろう?

リュウを失ったら、私はどうなるの?

「どうしたの?ナナコ」と、リュウが顔を覗き込んでいる。
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