恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
ウェディング担当者の名前を言って、しばらく待つと、20台後半の女性が急ぎ足で現れた。

髪をお団子に結って、グレイの制服を着ている。
「尾崎様、やっと、プロポーズできたのですね。10月の式の予定をキャンセルされたので、心配していました。」と、私に
「担当の江口です。」と、名刺を差し出した。


「お相手のナナコ様ですね。」と笑顔を見せ、
「今年の5月に尾崎様がこちらにいらして、式場の仮押さえを今年の10月から5ヶ月。なんて、予約をされた方は初めての事で…
まだ、プロポーズもしていないのかもって、
仮押さえをするのにも、かなりの金額がかかるものですから、ヤキモキしておりました。
ここのウェディングプランナーには、尾崎様は有名ですよ。」と笑いだす。

リュウは
「大丈夫って、何度も言ったじゃん」と口を尖らせ、「江口さんたら、心配性なんだよ。」と私の左手と自分の左手を指差しマリッジリングを見せる。
「おめでとうございます。」と満面の笑みの江口さんは、
「以前から申し上げている通り、お式だけ挙げるのでも、決める事が沢山あって、…」と続ける言葉を、遮って、

「チャペルって見れる?」とリュウは聞く。

「…丁度、1組目が終わったところですので、短時間なら、ご案内出来ますが…尾崎様は相変わらず、私の話は半分も聞いていませんね。」と半分怒りながら、どこかへ電話し、こちらへどうぞと前に立って歩き出す。
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