恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
セレモニーホールにつき江口さんが、両開きのドアをグッと開ける。
そこは正面と両サイドがガラス張りで海の青い色でいっぱいの部屋だった。
白い床とベンチも目に眩しい。

私は口がきけない。

「こんな感じですけど、良いかな」とリュウが笑う。

きっと、女の子なら誰でも思い描くイメージの結婚式場だ。


「31才の花嫁ですけど、大丈夫かな?」と江口さんに聞くと、リュウも
「37才の新郎ですけど、大丈夫かな?」と笑って、聞く。

江口さんは、
「かならず、最高のお式にします。お任せください。」と、声を出して笑った。


「江口さんはたよりになるね。」とリュウはニッコリし、鼻にしわをよせた江口さんが、
「奥様のヒールが、ピンヒールじゃなくて良かったですね。」とニッコリ返した。

もう、ここを出ないと、と言ったリュウに5分だけ待って、と江口さんは書類を山のように用意し、紙袋に入れ、私に手渡す。

「先ず、招待状の文章と、レターセットの選定です。
サンプルが、入っていますので、3日以内に決めて、ご連絡ください。
合わせて、引き出物は必要か、きちんと、話し合ってください。
パンフレットも入れておきました。
あと、ドレスはレンタルするのか、司会はプロの方を頼むのかも決めてください。
素敵な式にしましょう。」と宿題をたっぷり出す。

やれやれ。


これは大変な事になったぞと、車に乗り込みため息をつくと、リュウが
「ひとって、幸せでもため息が出ちゃうんだな」と笑う。
「これって、式を急いだリュウのせいなんじゃないかな。」とむくれると、
「だって、早くみんなナナコは俺のものだって言いたいから。」
と運転席から身を乗り出してきて、長いキスをする。

「…口紅ついちゃうでしょ」
と私は小さな声で文句を言ってみるが、機嫌が治っている自分が恥ずかしい。


「出発。」とリュウは口紅がついたまま、歌うように言って、エンジンをかけた。
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