恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
6月の終わりに一緒に来たデパートの駐車場に車を入れる。

手を繋いで、エスカレーターを上がる。
前に来た時は、恋人でもなんでもなかったのに、
今日はリュウの妻になっている。
人生って先が見えなくって、面白いと思う。

リュウに手を引かれ、イタリアンブランドの宝飾店に入る。
マリッジリングの箱と同じで、黒に金色の文字が書かれているところだ。

「いらっしゃいませ」と店員がやってくる。
「尾崎様、マリッジリングのサイズはいかがでしたか?」
と責任者のような男性に聞かれ、私の左手を掴んで見せる。
店員は私の指を確認し、
「お直しは必要なさそうですね。」と笑う。
隣にいた女性店員が、
「奥様の薬指にリボンを蝶々結びにしてからそっと抜いたものをお持ちになって、
このサイズの指輪をと、お買い求めになったんですよ。
リボンが柔らかかったので、少し心配でしたが、ピッタリでしたね。」と微笑む。

私はナルホドと思い、
リュウが寝ている私の指にリボンを結んでいる姿を想像し、少し微笑む。

リュウは
「何、笑ってるんだよ」と少し、機嫌が悪い。

「別に」と大きくニッコリする。

と、男性店員が店の奥から、
「奥様の指のサイズのものを幾つか選んでみました。」
と黒のビロードのトレイの上に指輪が光っている。
ダイヤモンドだ。
しっかりとした大きさの石で、カットが色々あるけど、

こ、これは私はちょっと、出来そうにない。
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