恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
リュウを玄関に座らせて、靴をぬがせる。と、
そのままリュウは廊下に転がってしまう。

私はリュウをまたぎ、キッチンへ向かう。
冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出し、転がったままのリュウに差し出す。

「飲んで」というと、
「もう飲めません、柳ブチョー」と答える。

やれやれ、すっかり酔っ払いだ。
私は、水を飲ませるのを諦め、リュウの両手を持って、引きずる。
重い。
やっとリビングのソファーの前にたどり着く。

「リュウ、自分でソファーに上がって、」というと、
リュウは目を閉じたまま、なんとか這い上がった。
大きなリュウは、2人掛けのソファーから、
膝下がまるっきり出ている。
仕方ない。
私のベッドを使わせる訳にはいかないでしょ。と、思ったところで、時間切れだ。


私は、本棚にしまってあった合鍵を取り出す。
少し考えてから、自分の使っている鍵をソファーの前にあるテーブルに置き、

「リュウ、鍵はここに置いておくから、
帰る時、新聞受けに投げ込んでおいて。
水、ちゃんと飲んでください。」と、こえをかけながら、内容をメモしてテーブルに置き、
リュウに毛布をかけ、
2リットルの水のペットボトルも、一緒において、バイトに向かう。


ドアの鍵をそっとかける時、シャランと鍵につけたキーホルダーが、鳴った。
この鍵は修一が使っていたものだ。
久ぶりに聞いたキーホルダーの音に胸がキュッと痛む。

仕事が不規則な私は、眠っている時間がまちまちだ。
修一はよく、そおっと鍵を開けて足音を立てないように部屋に入ってきた。
私は、ウトウトしながら、
その、シャランという音を、幸せなきもちで聞いていたものだ。

修一の笑顔をちょっと思い出し、
少し、泣きそうになりながら、自転車を漕いで、涙を、振り切った。
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