あの日失った想い
…なるほど。女の子たちの叫び声の原因はこの人か。


「あいかわらず人気だね。七瀬くん。
あんなチャラチャラした人のどこがいいのよねー」



仁美が呆れ気味に言った。



私は少し苦笑しながら頷いた。実は私もそうは思う。



七瀬くんこと七瀬 ハルは、うちの高校のモテ男子とでも言うのだろう。




たしかに、顔立ちはすごく整っていると思う。



だけど、噂によると元ヤンキーで、喧嘩とかもけっこうやっていたそうだ。



あー、怖いよ。


そんな世界の人に私は正直関わりたくない。




「おい、郁麻!初日から俺を置いていくって、どういうことだよー!?」



先ほど女の子たちに行き場を阻まれていた七瀬くんがクラスに入ってくるなり、隅っこで本を読んでいる男の子に絡んでいた。



「忙しい人ね」


「だね」


私たちは2人で顔を見合わせて微笑んだ。


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