どきどきするのはしかたない
……ん、こんな時…何度抱きしめられても、もっと抱きしめて欲しいと思う。もっと、甘えさせて欲しいと思ってしまう。ずっとこの腕の中で溺れていたい…それだけ私が子供なんだと思う。
「ん、…どうした?」
「…何でも無いです」
…ん、課長…。唇が触れる、重なる。
「足りない…いくらしても…足りない、涼葉…」
抱きしめられた。…はぁ。
「いくら甘えてくれても構わない…涼葉」
課長…。こんなの…幸せ過ぎる…いいのだろうか。
翌日は、結局どこにも行かず、課長の部屋で過ごした。一緒に暮らすようになれば、いずれそれに慣れてしまい、こういうだらだらと甘い過ごし方はしなくなって来るのだろう。
休日も、待ち望んだ休日では無くなってしまうような気がした。
だから、そうなる前に、今はお互いがお互いの生活をして、会える時に会う方が、時間も、相手を思う気持ちも、大事に出来るような気がした。だからまだ一緒には暮らしたくない。要は、結局私が甘えたいからだ。
一緒に居たい事にきりが無いから、夜、課長の部屋から早めに帰る事にした。
もう危ない目に遭う事も無い。
送るという課長を断って、一人で帰って来た。こういうところ、可愛く無いところだと思う。
本当はもっと居たいと思っている事、素直に口に出して言わないところもだ。
言える事が出来たら、もっと違うだろうに。好きだと思われている事は貪欲に欲しいくせに、相手には…。私の思い、本当は伝わってないのかも知れない。
やっぱりどこか、自分本位なんだと思う。
一日部屋を空けていると熱が篭っていて、夜なのにドアを開けた途端相変わらずむんとした。
一目散に部屋を通り抜け、サッシを開けベランダに出た。
…はぁ。…。
もし課長と一緒に暮らすようになったら…、この部屋から引っ越す事になるんだ…。課長がここに来る事にはならないだろうから…。
この部屋は、課長には狭い…。
カチ。…ん?
「フゥー…。帰って来たのか…」
「あ、はい、戻りました」
居たんだ…。煙草の匂いが、今、して来た。