どきどきするのはしかたない
・…解った。そして

七草さんは何も聞かない。
私からはっきり何も言わない事が、まだ言える事が無いという事だからかも知れない。
七草さん…。私の事、よく知っている。見張ってるの?ってくらい。

…。

「七草さん…何者ですか?もしかして、私の部屋…盗聴してます?」

あまりにも現実離れした質問だ。だけど、もう、自分でも、言ってて可笑しいと思ってないかも知れない。

「…フ、さぁなぁ…、してるかもなぁ。俺は変人だから。愛徳の事が好き過ぎて、してるかもな?
いつでも簡単に部屋に入れてるし、解らないぞ?どこか探せば出てくるかもな」

…有りそうで無さそうな…。この人だと、有りそうだから恐い。

「本当、有ったりして」

…そんな事、無いでしょと、言っても、そうは思ってないかもって、きっとバレてる。
七草さんは解らない人だから信じられる。一旦そう言って信じていけると言った人を、私…、疑いの目で見るつもりなのだろうか…。
盗聴器は簡単に入手出来るって言うし、…私が漏らした声を聞き付けられた事も…不思議は不思議だと思う…。
そんなに隣の部屋に聞こえる程のボリュームでは無かったと思う。
SEとは名ばかりで、実は、極秘に潜入させた何かの調査員?…探偵、とか?
私を、というより、課長に関わる周りの人間を見張ってるとか、調べてるとか…。ふぅ…どこまで飛躍させるつもりよ。すっかり妄想癖がついてしまった。

「プログラムの開発とかもするのですか?」

「…ん?…どうした急に。俺の事、知りたくなったのか?」

「七草さんて、SEだから?」

「…フ。どういう理由だ。システムの開発は出来るよ。面白いぞ。今は、特には…な。
従来ある物をもっと快適にサクサクと出来るように、くらいの事はしてるよ。時々、夜間から早朝の時間帯で使えない時があるって通達があるだろ?」

「あ、はい」

そう言われれば。居ない間の事だから、あまり気に掛けた事は無かったかな。

「それがそうだ、バージョンアップ。俺も雑用ばかりじゃ無く、人知れず仕事してるんだよ?」
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