どきどきするのはしかたない
…ん、…ん、…ん゙ん゙。
はぁ、はっはっ、…目が覚めた。…と、言うより、覚まされた…。苦しい原因が目の前に居た。
「…あ、起きたのか」
起きたのかって…。
「…起こされました、息苦しくて…起きるに決まって…」
…ん。ん?…珈琲の味がする…。合わされた唇から香って来る。
「…いきなり堕ちて眠って、…目が覚めたら目の前に裸体があった。胸が押し付けられてて…苦しかった」
…もう、…嫌。
「起きて、濃い珈琲飲んで、今、覚醒してるんだ。だから…」
「あ、…。今、何時?ですか?」
「…さあ。程々に、朝?」
…どの程度の朝なんだろう。カーテンが閉まってるからよく解らない…ぁ。
「…あ、…の、…七草さん?」
「うん?」
…嫌じゃないのかな。こんな…、どっちつかずみたいな状態の私。…ブレブレの私なのに。
「ん?どうした?…襲うって言った続きだ…」
「ぁ…嫌じゃ無いですか?…こんな私」
「帰って来たって事は、どうであれ、そういう事だろ?…理屈じゃない。そういう事だ。
やいやい色々言っても俺には関係無い。ここに帰って来たんだから」
…。
「…ふぅ。…愛徳」
動いていた手が止まった。…抱きしめられた。
「…ごめん。愛徳が嫌なら止めよう。…そうだよな、ん、…俺が節操が無かったな」
節操が無いのは私だ。抱きしめたりして、最初に…煽ったみたいな事をしたのは私だ。
「あの、私…」
「状況をもっと考えるべきだった。まだ、それどころじゃ無いよな。
会って話して…帰って来て…、色々揺れてるって言うのに。…もしかしたら、最終的には課長に戻るって事になるかも知れないのにな?
危うく、乱暴してしまうところだった…」
「…乱暴だなんて、…そんな言い方…」
…駄目だ。やっぱり帰って来た時から、ぎくしゃくしてる感じがする。…私がだ。原因は、気持ちを捨て切れて無いからだ。私が課長としてしまった、その事もあるから…。
帰りましたと報告だけして自分の部屋に戻っておくのがベストだった…。
黙ってじっと抱いている七草さんの身体を抱きしめた。
襲わないと言うなら、こうして居る…。部屋には帰らない、って…決めて居るんだから。
これは、また、煽ってるになるのかな。