どきどきするのはしかたない

「突然お御呼び立てして申し訳ありません。もう、ご連絡する事は無いと思っていたのですが」

「いえ、構いませんよ」

「でも、驚きました。もう、あのお宅の弁護士さんを辞められていたなんて」

「はい。…正直、もう疲れてましたから。この前の事に限らず、仕事とは言え、色んな事がありました。求められる事は、必ず立場を悪くしない結果にする事ですから。
解って貰えますか?弁護士と言えど、まるで意志とは違う仕事でしたから…。解雇されて良かったんです。今は普通に出来る事で気が楽になりました」

…何だか恐い話だ。依頼人の望む事に応えるというのも…。

「私の知っている事ならお話ししますよ。…その人だと、名前を言って話はしませんが。
でも、そういう事で聞いてください」

「では、単刀直入に伺います。山本晶仁という人物と、あるお嬢さんは、昔、結婚の話がありました。それは破談になってしまったと聞いているのですが、…その、…破談になる迄の二人の関係性…というのは、貴方はどうだったか知っていましたか?
それから、今といいますか、また、結婚の話が出ているようなんです。それは、本当の結婚なんでしょうか、それとも、何かの為の偽装なんでしょうか…」

「…ふぅ。…はい、…私がお話出来る事は、全てが確証の無い事ですから、お話ししてしまっては、変に掻き混ぜる事になってしまいますが…。
私が自分の目で見て、自分の耳で直接聞いた事では無いので。これではお役には立てませんね」

「つまりは、何かしらはあったと、聞いていると言う事ですね?
今ある結婚話はどうでしょう。ある事ですか?偽装ですか?」

「…それは、…」

「構いません。聞いた事で、構いませんから」

…。

「…私が、辞める少し前に聞いた話です。それだと、偽装を装った、本当の結婚だと…言っていたと」

「え?」

本当の、結婚?…。

「解らない事ですね…。だから、真実かどうかも…ただ、あるお嬢さんがそう言っていた事だと。
そう言いたかっただけかも知れません。
すみません、これは私の私的な意見です。あのお嬢さんは、そういうところがありますから。
すみません、私が判断を操作するような事を言ってはいけませんね」

…。

「そのお嬢さんには、会えませんよね?」

「…それは、示談の時の取り決めがありますから、普通は無理だと思います…。
今は、私よりももっと、何事にも屈強な弁護士の方がついているようです。これは…余談でしたね」

…。

「もしまたご連絡したら、お会いする事は出来ますか?」

「…え?はい。私はいつでも構いませんが」

「では、また…、お会い願う事があるかも知れません。その時は宜しくお願いします」

「解りました、いつでも。ご相談にのります」
< 154 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop