どきどきするのはしかたない
・エピローグ

あれから結構日が経つのに、ドアに掛けたままの白い袋がずっとそのままある。
気がつかない事は無いと思うのに。出入りしていれば、ある方が返って邪魔なくらいだ…。

怪しい行動だけど、掛けた袋を覗いて見た。
…あ、メモは無い。わざわざ取り出して袋はそのままに?
んー、何か可笑しい…。

戻って部屋に入ろうとした。

あっ。

「こんばんは」

「…こんばんは」

いつかの家政婦さんだ。…気まずい。七草さんの部屋の前をうろうろしてるところ、見られたかな。
ん?でも、今日はちょっと時間が遅いみたいだけど。こんな時間に用?…。
…私が関与する事では無いか。この人が来たって事は、ご飯を作るって事よね?
じゃあ、今夜は居るのは確かなのかな。

「…あの、すみません、七草さんはお元気ですか?隣なのに最近会わなくて」

思わず聞いていた。会わなくしていたのは私だけど。

「七草?…あー、はい、元気ですよ」

ん?呼び捨て?…何か違和感。

「では、おやすみなさい」

「あ、はい、おやすみなさい」

何だろう、しっくり来ないこの感じ。話もこれ以上は、みたいに避けられた感じだし。…まぁ、仕事をしに来てるのだから、私と長話するって事も…かな。
本当に家政婦さんなの?実はやっぱり彼女さんとかだったんじゃ無いの?
だから、メモだけを取ったのは彼女さんで、これ何、みたいな事になってるとか。
また、これはいけない妄想かな。

わざとだ。今夜はベランダに出てから、その後、鍵をかけずに居た。
玄関も鍵をしなかった。
不思議と嗅覚の鋭いあの人なら、開いてる事を察知するんじゃないかと。そんな不思議な人だ。

でも、外れた。夜中になっても来る事は無かった。


ブー、…。課長だ…。

【来週、出社したら解る事だが、七草が退職した】

え?
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