どきどきするのはしかたない
私…課長とつき合ってる。
そう思っただけでドキドキする。
課長が泊まって帰った日。
これも夢じゃないのかと思った。
狭いベッドで課長に抱きしめられたまま、朝まで一緒に居られたなんて。
シャワーから戻った課長は私と同じ香りがして、それも何だか何とも言えなくて。
涼葉って言ってギュッと腕の中に抱きしめてくれた。
キャー。課長は好きだって、何度も言ってくれた。好きだって。
「涼葉?熱でもあるの?何だかボーッとしてる」
「あ、え、大丈夫。何でもない。ちょっと考え事」
「心が囚われてしまうような考え事なんだ」
ツンツンと、脇を突かれた。
「あー、ま、あ」
「あ、何かいい事あったんだ。でしょ?」
更に突かれた。
「それなりに」
「ふ~ん。何だか…ふ~ん」
以前はこんな事無かったのに。
好きってちゃんと言われて始めた事が、こんなにドキドキするモノだなんて。思わなかった。
前とは違うドキドキだ。
それはきっと、好きだと、思えば思う程、嬉しい反面、反対側に不安もあるからだと思う。
…あ、私、資料室に行かないといけないんだった。
もう…憂鬱〜。
「ちょっと資料室に行って来るね」
「うわ〜、今から?あ、ごめん、ついでにこれの返却も頼んでいい?」
「うん、大丈夫大丈夫。じゃあ、また時間が掛かるかも知れないけど」
「行ってらっしゃい、お願いします。遅くなりそうだったら諦めて切り上げた方がいいよ」
時計を指された。
「うん。そうする」
ファイルを預かり資料室に向かった。