どきどきするのはしかたない

「あ、涼葉。良かった。呼びに行こうかと思ってたところだったの。
探すのに夢中になって、時間を忘れてるんじゃないかと思って」

「有難う、大丈夫。でも見当たらなかったのよね」

「そうなんだ。誰か使ってるのかもしれないね」

「んー、だから今日は諦めて戻って来た」

「それ、正解。デスク、大体片付けておいたから。
帰ろ?今日は特にしないといけない事は無いでしょ?
先にロッカーに行ってるね」

「うん、有難う。直ぐ行くから」



“風邪”は治ったって言ったのに。
“薬”になるって、どういう意味?
風邪というのは私と課長が拗れていた状態の例え。
終わった、という日からの、様々な症状の“風邪”の事だった。
それが無くなったという事は、“薬”は必要無い。
…要らないよね。

風邪薬は言わば『常備薬』。
ひいたかなと思ったら、直ぐに飲めるようにしてあるモノ。
重症にならずに済む。
もし“風邪になる”事が起きたら、七草さんが薬。…薬。
…薬が治してくれるという事?
…七草さん。
何かあったら話を聞いてくれるって事なのかな。

「涼葉?涼、葉?」

「あ、は、い。はい」

「もう…、またボーッとしちゃって。大丈夫?
じゃあ、帰るね?」

「あ、うん、お疲れ様」

「お疲れ様、フフ」

週末だから、今からデートでもあるのかな?
何も言って無かったけど、ちょっとお洒落っぽい服装だったし。何となく、嬉しそうにしている様子を見せたかったのかも知れない。
今から、彼とデートなのって。
私は今も特に何も変わらない…平気。前と同じ。ちゃんと確認し合ってつき合いが始まっても課長は忙しい。
…帰るとしますか。
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