どきどきするのはしかたない

今から8月の予定があるなんて、それだけでも毎日を過ごす糧になるような気がした。

一緒にご飯を食べ、一緒にお風呂に入り、一緒にベッドに入った。

課長は私を存分に翻弄しながら、こんなにしてるからって誤解するなよ、と言った。
…よく…解らなかった。…今は何も…それどころでは無い、考え事が出来るだけの余裕が無い。今は課長しか考えられないでいる。
思考回路が繋がるのに少々時間が必要だった。
こんな風にしてるからって、またこれで最後だなんて言わないから、と言われて、やっと繋がった。
…とんでもないブラックジョークだと思った。
そんな事は二度とごめんだ。

「…はぁ、解りました。そうだとしても、私も前回のように逃げるように引きませんから。
最後だって、言われたら、絶対、問い質しますから」

「そんな事はもう無いから、大丈夫だ」

…。

確かにただの冗談だと言われたらそうだと思う。
だけど、…。もうそんな、不安になるような事は本当に無いのですよね?…。

「確信出来たモノが解ったら、益々、堪らなくなった…だから、こんなに…欲しくなるんだ…。
好きだ、涼葉…」

ん、課長…。だったら、この言葉だけで良かったです。
課長の身体を強く抱きしめた。


日曜の夜。課長に送って貰い、部屋に帰った。
一晩の外泊…、あっという間だった。

夜だけど空気を入れ換えたくてサッシを開けた。
吹き抜けるような夜風は気持ち良かった。

気のせいかも知れないが、課長の部屋を出てからと、うちの近くで、何だか誰かに見られているような気がした。
それを話すと、課長は気のせいだろうと言った。
涼葉はいいって言ったけど、送って来て結果良かっただろって言われて、これが勘違いだったとしても、本当良かったと思って安心した。
目に見えない恐怖のようなモノが、意識に残らずに済んだから。

課長は部屋の前まで一緒に上がってくれた。

「…おやすみ」

「はい…有難うございました。また…明日ですね。
気をつけて帰ってくださいね」

徐に、課長は私を抱きしめ息を吐いた。身体を離すと顔を見つめ、ゆっくり頭に手を置き、じゃあなと言って帰って行った。
…私だって、離れがたい。
…はぁ、課長、おやすみなさい。初…デート、と、お泊り、終わってしまった。

暫くして、着いたよ、おやすみ、とメールが来た。
課長が彼っぽい事をしてる…。
おやすみなさい、と返信した。
きっとまた眠れない。
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