どきどきするのはしかたない

会社で見掛ける事は仕方ないと思っている。
同じ会社、同じフロアに居るのだから、視野に入れないで居る事は難しい。
こうして、隙をつくような事までされては、一人で席を離れる事も考え物になる。

はぁ、…何の話を聞いてくれというのだろう。
関係を続けたい…このままセフレにでもなれというのだろうか。
考え方を変えたら、今までの私達はセフレだった、と言えるのかも知れない。
でも、私は、そんな割り切った気持ちで課長と関係を持った訳じゃない。
少なくとも、憧れの人で好きだった。好きだからつき合っていた、と思っていた。
セフレになろうと、初めから言われていたら、私は…それでもいいと思っただろうか。…解らない。…だけど。
好きなら……それでも構わないと思ったかも知れない……ううん…解らない。…やっぱり、それは嫌…。

課長は営業一課の課長で、独身で人気があった。過去形にしてはいけないか…。
今も変わらず人気がある。
だからと言って、女子社員の中で、女性を取っ替え引っ替えしてるだとか、そんな酷い噂は聞いた事は無かった。
現に私との半年のつき合いの中で、妙に思うような、怪しい言動も無かったと思う。
眠っている隙に携帯を見るとか、した事がある訳ではない。そんな気にさせられるような事など一度も無かったという事だ。
…一緒に居た時間は限られていたから、例え、他につき合いのある女性が居たとしても、それは私が鈍くて解らなかったのかも知れない。
そんな事を今更疑い始めたらきりが無いだろう。忙しいと言って会えなかった日に、別の女性と会っていたかもなんて…。思いもしない。


「遅くなってごめんね。中々見つからなくて。サボってた訳じゃないから。
ねえ?さっき、誰か私を探してなかった?」

資料を抱えフロアに戻って、声を掛けられた人の事を聞いてみた。

「え?ううん。誰も、特に探してるようには見えなかったけど…」

「…そうなんだ」

変ね…。確かに呼ばれて返事までしたのに。
居ないならいいのか。でも…誰だったんだろう。
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