どきどきするのはしかたない

ふぅ。…何だか疲れた。
テーブルにバッグと買い物袋を置き、洗濯物を取り込みにベランダに出た。

はぁ。今日に限った事じゃないけど…。
暗くなってから取り込むのって、初めは、一体いつまで干してるの、なんて思われてるんじゃないかと考えた事もあったけど。
人の洗濯物なんかに、誰が関心があるんだって…。
そう思ったら気にならなくなった。
何日も何日も干しっぱなしにしてる訳じゃないし。
はぁ。でも、乾いていても気持ち、カラッとはしてないけどね。
掛けてある洗濯ハンガーごと、抱えるようにして持ち、振り返った。

…ん?

ベランダの仕切り板の前。エアコンの室外機の上に白い袋があった。
取っ手の部分が緩く縛られていた。
…何これ。出た時にもあっただろうに、気がつかなかったな。ごみでも入れたっけ…。こんな物…、置いた記憶も無いんだけど…。

取り敢えず、確かめるにしても洗濯物を先に持ち込んで、それからだ。
ソファーに洗濯物を投げ落とした。

もう一度ベランダに出てそれを見た。
ちょっと恐いから、人差し指を袋の縛り口に掛け、少し横に引いて広げて見た。
…あ。中には6缶パックのカシスオレンジが入っていた。
…どうしてこんな物が。
ここは1階じゃない。簡単に外から置ける高さじゃないのに。…な、に?

いつからあるんだろう。
よく見たら、缶の下にレシートが見えた。…日付は今日。
何だか黒く文字が透けていたから、裏に何か書かれているのだと思った。
手に取って裏返して見た。

『“風邪”は大丈夫になったのか?』と書いてあった。
これは…どう考えても隣の人がした事としか思えない。
こんな事を書けるのは、あの日の会話を知っている人だけだから。
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