身代わりペット
「てぇいっ!!」

私は勢いよく立ち上がり、課長の手を振り払った。

ちょっと勢いが付き過ぎたのか課長がよろめいたけど、コケはしなかったので大丈夫。

「これで戻れますか?」

「あ、ああ。ありがとう。自分じゃどうにも出来なかったから」

課長は呼吸を荒くしながら少し自分の手を眺めていたけど、さっきよりも顔色も良くなったしお腹の虫も大分と治まったし、問題ないと思う。もうすぐでお昼休みだし。

「さて、仕事に戻りますか?みんなには私から説明しておきますから」

「ああ。なにからなにまでありがとう」

「いえ」

果たして私の説明で収拾が付くか疑問だけど、課長の名誉は守ってあげたい。

だから頑張ろう。

オフィスに何食わぬ顔で戻った私たちは、みんなからの質問攻めに合うかと思いきや、課長がすっかり調子を取り戻した事に感謝こそされたけど、何があったのかの追及はされなかった。

(みんな、大人だなぁ)

ただ一人、千歳だけが目をランランと輝かせていたけどね。
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