身代わりペット
「ウチに住むか?」

「え……?」

突然の申し出に、私は固まってしまう。

「あ、いや、違うんだ。新しい所が見付かるまでの話で……」

「……本気で言ってます?」

「あ、ああ」

「ルイちゃんの代わりですか?」

「決してそんなんじゃ……!」

私の言葉に、課長が思いっきり首を横に振った。

高速過ぎて、頭が飛んで行っちゃうんじゃないかと思ったくらい。

「冗談です。今の課長の焦った顔、面白かったです」

クスクスと笑ったら、課長の顔が見る見る内に赤くなって行く。

「中条~~!お前なぁ、俺は真剣にっ!」

課長の手に握られているペットボトルが、ペキペキと音を立てている。

「ごめんなさい。でも……本当に良いんですか?」

「困っている部下を放って置けないからな」

「ありがとうございます。じゃあ、新しいアパートが決まるまで、よろしくお願いします」

私は課長に向き直り、深く頭を下げた。

「ああ、よろしくな。……さて、もういい時間だしそろそろ寝るか。明日も仕事だし」

課長が背伸びをして、大きなあくびをした。

「あ、そうですね。じゃ、あの、失礼します。おやすみなさい」

「うん。今度こそおやすみ」

私は、今度は軽く会釈をしてリビングを後にする。

ちょっとおぼつかない足元。

やっと部屋に戻り、ドアを閉めた瞬間、ベッドにダイブして身悶えた。

「〇×*□+▽%$#▽&□〇~~~~~~!!!!」

訳の分からない言葉を発しながら、枕に顔を埋める。
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