特別な君のために

三者面談の前日、お父さんが早く帰宅して待っていてくれた。

これから話す内容に緊張しつつ、私はいつも通りご飯を食べる。


「美冬、もう、指は痛くないんだな」

お箸を普通に使い、お魚を食べている私を見て、お父さんがぽつりと言った。

「うん、大丈夫。でも、爪の形が悪くなっちゃったな～」

右手中指の骨はしっかりくっついたけれど、抜け落ちてしまった爪が生え変わった。

今はとても小さくていびつな形の爪が、申し訳程度にちょこんとくっついている。

「それも大丈夫。時間が経てば、ちゃんと綺麗な形に整うから」

お母さんがお味噌汁を運びながら、笑って答えてくれた。

「だといいけど。このままじゃ、かっこ悪いもん」

「今は付け爪なんかもあるんじゃないのか？　お父さんの会社の女子社員はよくキラキラしたものを付けてきているぞ」

「え？　そんなの付けて行ってもいいの！？」

「ああ、いいぞ別に。うちは飲食関係じゃないし、事務職で誰にも迷惑をかけないのであれば。まあ、高校生のうちは無理だろうけどな」