特別な君のために
「じゃあ、私が大学生になったら、ネイルアートしてもいい?」
お母さんに聞いたら、きっとダメって言うだろうけれど。
だからそういうことは、できるだけお父さんに聞くようにしている。
我ながらズルいけれど、お父さんはやっぱり娘に甘いらしい。
お父さんは少しだけ考えて、そして言った。
「いいけれど、そういう贅沢なことは自分で働いたお金でしなさい。大学生のうちはバイト代で、だな」
「うんっ! 楽しみだな……」
私は箸を持ちながら、右手の指先を見た。
小さな中指の爪が、わずかに存在を主張しているけれど、他の爪とのアンバランスさがちょっと痛々しい。
私が大学へ入学する頃には、この爪も少しは伸びているだろうか。
「それより美冬、大学生になれるのか?」
「うっ……!」
私が爪に気をとられている間に、お父さんから厳しい質問が飛んできた。
仕事や勉強のことに関しては、お母さんよりお父さんの方が厳しい……。
「美冬がどんな仕事に就きたいのか、それによって入りたい大学も変わってくると思うけれど……」