その笑顔が見たい


何もなければ迷惑をかけたお詫びはなんだってする。
だから出てくれ。
すると佐川さんはすぐに電話口に出た。


「もしもし?」


「もしもし!」


切羽詰まった声に異変を察知してくれる。


「何事だ?」


「葉月、葉月はそっちにいますか?」


「把握してないが、何があった?」


「詳しくはわからないんですが、葉月が、葉月が危ないんです。探してください」


「わかった。はづを見つければいいんだな。また連絡する」


「よろしくお願いします」


この会話をしている間も、走り続けていた。
タクシーを拾い葉月の会社まで走らせる。
赤信号が多く感じるのは気のせいか。


「葉月…無事でいてくれ」


それだけをずっと呟いていた。
するとスマホが振動する。
佐川さんの番号を表示させた画面を見ながら手が震えていた。


「もしもし!」


「翔太くん、今どこだ?」


「そちらに向かってます。葉月は見つかりましたか?」


「それが外出しているらしく、連絡が取れないんだ」


「スマホは?」


「机の上に…」


「なんで…」


「外出先はもう出て、こちらに戻ってきているようだから、とにかく待ってみる」


「お願いします」


その通話を終えた5分後、会社の前に着きタクシーを降りた。
ちょうど正面玄関に入っていく葉月を見つけた。


「葉月!」


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