その笑顔が見たい

待ち合わせ場所に行くとショッピングセンターの玄関口に紗江は立っていた。
スマホをいじることもなく、休日のお昼時の混雑した街中から俺をみつけようとしている。
改札からまっすぐに紗江のところへ歩いて行くと、彼女はホッとしたように駆け寄って来た。

「走って来ることないのに」

「うん」

走って来たせいか、前髪が揺れていて顔を紅潮させている。
綺麗より可愛いが表現的に合っている紗江をチラチラと男性が見ていた。
彼女が動けば周りがはなやぐ。
そんな雰囲気を持っている紗江をこれ以上傷つけることにためらいを感じ始めている。


傷つける?


ここ何日かで気持ちが葉月に傾いている。
葉月のことを考えるようになってから、他の女性の事は頭に入ってこない。
葉月に会いたいという気持ちがふつふつと湧いてくるのだった。

こんな気持ちで紗江に会ってても会話は続かない。
映画を観終わると夕食までにはまだ早い時間だった。
映画館が入っている商業施設から外に出ると、爽やかな5月の風が頬を撫でる。


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