その笑顔が見たい
土曜日、紗江と別れてからあてもなく町をふらつく気にもなれず、まっすぐに自宅へと帰った。
途中、聡に連絡をしたが、仕事中だったらしく忙しそうにしていたので、それ以上は何も聞けずにいた。どうやら病院勤務以外にも週末は企業のサッカーチームのトレーナーとして遠征や試合に付いて行っているようだ。

日曜は珍しく横浜の実家に帰った。
まだ両親共、仕事は現役でバリバリ働いている。
社会人になって家を出たっきり盆暮れ正月以外は実家に近寄らない俺が突然帰って来たことに何かあったのかと思ったと言われた。

「何かってなんだよ」

「結婚とか?」

「するかよ」

「そうよねー、翔太は葉月ちゃん一筋だもんね」

「…」

母親は俺が葉月を今でも大好きだとからかう。
今までちゃんと彼女を紹介しないからというが、冗談に聞こえないから戸惑う。

「あれ?図星だった?」

「んなわけないだろ」

女親というのは息子をからかって面白いのだろうか?
話をそらしたくて聡の名前を出す。

「あ、そう言えば聡に会った」


今度は母親が驚く番。昼時に来た俺はリビングのテーブルで「突然来るから何もない」とあり合わせで作ってくれた母親特製のチャーハンを頬張っていた。
先に食事を終えていた母親は、デザートにと食べていたプリンをスプーンからポタっとテーブルに落とした。


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