その笑顔が見たい
午後七時五十分。
宮崎がトイレなのかコピーなのか知らないが席を外した時に帰り支度をする。


「お先に失礼します」


まだ残っていた柳さんと他の同僚に声をかけ、待ち合わせの時間よりも早めにオフィスを出る。


「お疲れさん」


柳さんは含み笑いしていたが、そんなことは気にならないほど、葉月に会える嬉しさでいっぱいだった。


社員出口はすでにまばらで人通りは少ない。
それでも待ち合わせのように立っていると目立つため、少し死角になるような壁際で待つ。
エレベーターが開くたびに、ドキドキしていた。
我に返って自嘲する。まるで高校生だ。
恋い焦がれた相手を待つって、こんな感じなんだな。


そうだ、葉月がいなくなってからあの頃には自覚がなかった葉月への思いが膨らんで行った。
もう会えないことに苛立って、だらしない恋愛ばかりしていた。
諦め掛けていた葉月と再会できた今、葉月を自分のものにしたくてどうしようもない。
それが素直な気持ちだった。


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